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研修情報

第二回反復違法行為対応研修会 > 研修会プログラム > 第4講義

行動原理に適った治療と条件反射制御法

                            下総精神医療センター
                           薬物依存治療部長 平井愼二

 精神科領域の多くの技法は、ヒトは思考し、その判断に基づいて行動するという誤解に基づいているので、効果が乏しいと考えられる。
 現実のヒトの行動は過去の行動を無意識的に反復する第一信号系と未来を良くしようと考えて行動を作る第二信号系の2つの中枢が関与して生じる。従って、逸脱行動が反復することを抑制するためには、いずれの中枢にもその特性に応じた働きかけをしなければならない。治療においては、用いる技法がどちらの系にどのように作用しているかを意識して働きかけるべきである。
 特定の行動をやめる決意をしたのに、再び同じ行動が生じるのは、その行動を促進する反射連鎖が強く作動するように第一信号系に成立しているからである。その反射連鎖を効果的に制御するのが条件反射制御法である。
 第一信号系の特定の反射連鎖に司られた行動が生じるか否かは、それを抑制しようとする第二信号系の抑制の強さにもよるため、第二信号系にも強力に働きかけるべきである。

1.第一信号系への働きかけ
1)条件反射制御法
 条件反射制御法は第一信号系に働きかけて、一旦はやめると決意した行動や望まないが生じていた神経活動を制御可能にするものである。大きくは次の二つの作業に分かれる。
① 制御刺激の設定と利用
 第一法は、任意の刺激を設け、その刺激を作動させた後には標的とする行動をとらない事実を作ることを計画的に反復するものである。
 任意の刺激は、胸に手を当て、離して拳を作り、その後、親指を拳に握り込む等の簡単で自然で、しかし、自分には特殊な動作が適切である。標的の行動をとらないことを確実にするために、閉鎖病棟や刑務所等の閉鎖空間で行うことが安全であり、また、制御刺激にする動作に、例えば覚醒剤乱用をやめようとする者ならば、開眼したまま、「私は、今、覚醒剤はやれない、大丈夫」という言葉を伴わせると効果が高い。
 計画的に前記の任意の刺激を作ることは、まずは標的行動を意識することであり、従って、それが刺激になって標的行動を司る神経活動の一部が開始される。また、同時に任意の動作および言葉からの刺激を大脳に受け、この後、標的行動をとらない時間を作る。当初は、この任意の動作および言葉を作動させると、標的行動を作る反射連鎖は限定的に作動するが、生理的報酬を必ず獲得しないので、任意の動作および言葉の後に生じる標的行動を促進する反射連鎖の一部は進化を支えない現象となり、それを反復する。この反復により任意の動作および言葉の後に生じた標的行動を促進する反射連鎖は抑制を受け、従って、任意の動作と言葉の刺激は、後には、標的行動のない時間を始める制御刺激として成立する。つまり、標的行動への欲求が生じても、計画的にその任意の動作と言葉を作動させれば、それは制御刺激として作用し、標的行動を司る反射連鎖は第一信号系内で制止を受け、欲求は数秒で消え去る。
 また、開眼してこの制御刺激を反復するので、視認したものが標的行動を促進しないものに変化してゆく。多くの場所で制御刺激を行うことにより、生活環境を安全な場所に変えられる。
② 終末に生理的報酬がない設定での標的行動の意識的反復
 第二法は、計画的に標的行動を促進する反射連鎖を作動させ、しかし、終末に生理的報酬を獲得しないことを反復するものである。生理的報酬がない神経活動は進化を支えず、生物種に必要がなく、その反射連鎖は抑制を受ける。従って、この作業の反復により標的行動を司る後天的反射連鎖の作動性は低減し、低減した状態が維持される。この第二法は、望まない行動の疑似、想像、作文とそれを読むことにより行う。

2)規則的な生活を送る能力の回復
 日常生活や就労を自立して規則的に行えない者に対しては、それらを行う規則性を第一信号系に定着させるために生活訓練が必要である。

2.第二信号系への働きかけ
1)法による抑止力の設定
 患者の同意が得られれば、患者が取締職員と面接する場を設ける。患者は自分が特定の違法行為を反復する傾向をもつこと、並びに、住所、家族等について取締職員に伝える。取締職員は患者に電話等で接触し、また、治療者に照会し、患者の状況を観察して、強力な法の抑止力を処遇に設定する。

2)自分の存在価値の確認
 内観療法や過去の体験の書き出しを行う。

3)精神療法
 他者の支援を得て、思考の整理を行う。





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