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第二回反復違法行為対応研修会 > 研修会プログラム > 第2講義

行動原理に適った司法と医療の∞連携

                            下総精神医療センター
                           薬物依存治療部長 平井愼二

 ヒトは第一信号系と第二信号系を中枢としてもち、集団で社会と法をつくって、生活している。社会から逸脱し、他者の利益を害する行動は違法であり、その原因が疾病によるものであれば治療等で対応することが適切であり、自由な思考によるものであれば犯罪であるので刑罰で対応する。そのような各問題への対応方針は正しい。ところが、現実には疾病性と犯罪性の両方をもつ者が多いので、反復傾向のある違法行為に対しては、第一信号系にも第二信号系にも働きかける連携体系を成立させなければならない。

1.対応体系の成立のための共通の目的
 反復傾向のある違法行為に対しては、取締処分側(刑事司法体系)と援助側(医療、保健、教育等)は、社会を平安に保ち、繁栄を支えることを共通の目的にして連携し、自らの機能を発揮するべきである。各領域の機能はまずは次が考えられる。
 取締処分側は、犯罪をはたらいた者に対して罰を与え、再度、罰を受けないために再犯を回避させる効果、並びに、罰する態勢を社会の一般の人に示し、罰を受けないために犯罪を回避させる効果を発揮して、前出の共通の目的に貢献できる。
 援助側は、対象者の逸脱した行動に治療や訓練を用いて働きかけ、対象者を社会に適応させる効果を発揮して、前出の共通の目的に貢献できる。
これらの異なる態勢をもって取締処分側と援助側が反復傾向のある違法行為を行う同一の群に働きかけるので、両領域は摩擦しそうに見える。しかし、共通の目的をもっており、次の連携が可能である。

2.二つの領域の要素と差異、及び相互補完性
 反復傾向のある違法行為を行う者に働きかける関係機関を取締処分側と援助側に二分するのは、違法行為への強制的な働きかけが法に基づいているか否かの一点である。
 従って、強制力があることに基づいて取締処分側が持つ効果を、強制力のない援助側は持たない。逆に、強制力がないことに基づいて援助側が持つ効果を、強制力のある取締処分側は持たない。つまり、取締処分側と援助側は、単独では欠点をもち、その欠点を他方が補えるという相互補完的な関係にある。

3.取締処分側と援助側の連携
 取締処分側と援助側の連携により対応体系の効果を高めるためには、一方の領域の態勢を他方の態勢に合わせるものとしてはならない。そうすれば、種々の効果を集めるための連携において、いずれかの領域の効果が損なわれ、態勢を変更した領域の存在価値が低下するだけでなく、他方の領域の欠点を補えず、連携体系の効果が不良になる。両領域の要素を可能な限り保持して、相互に他領域の機能を尊重し、期待して、対象者に働きかけなければならない。
 つまり、まずは他方に影響されず独立して自らの機能を発揮し、対象者に提供できない効果を、自らの機能を可能な限り阻害しない方法で、他方の領域から得て補完するよう努めるべきである。

4.取締処分側と援助側が採るべき態勢
 取締処分側は、将来の違法行為を防ぐために強力な指導を行い、既遂の違法行為は厳正に取締り、処分においては刑罰だけでなく、援助へのかかわりを対象者に応じた強制力を持って指導するべきである。
 援助側は、対象者による既遂の違法行為を取締機関に通報せず、援助の提供を優先し、また、援助側職員から取締側職員に対象者の存在と違法行為反復傾向を伝えることに関して対象者の同意を得るように努め、同意が得られれば、取締職員の継続的なかかわりを処遇に設定するべきである。

5.連携体系と対象者の関係保持に関する各領域の機能と設定される要素
 取締処分側は、反復傾向のある違法行為をした者を検挙等で体系に強制的にかかわらせ、刑罰や治療を与え、また、その強制により生じる法による抑止力で違法行為を行っている者にもそうでない者にも違法行為を回避させることを担う。援助側は、対象者の反復する傾向のある違法行為を通報せず、体系に受容的に招き入れ、治療や訓練を提供し、取締職員のかかわりを得て、法による抑止力を利用できる。
 それらの各態勢により、反復傾向のある違法行為を行う者には、治療および法による抑止力、それらへのかかわり保持力(受容と強制の両方による)が対象者個々の特性に応じて提供される。





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